2009年 02月 13日
監督:ジョルジュ・ランパン 原作:フョードル・ドストエフスキー 脚本:シャルル・スパーク 撮影:クリスチャン・マトラ 出演:ジェラール・フィリップ エドウィジュ・フィエール シルヴィー × × × 日のお題はドストエフスキー、 そのなかからフランス版『白痴』。 ネットでチェックすると、ドストエフスキーものは、複数回にわたって、幾つかの作品が映画化されています。私の中では“どうせあとで小説もよむのだしし、どの『カラマーゾフ兄弟』でも、どの『白痴』でもどの『罪と罰』でもいいや”とは思ってるのですが、これを観る以前に、同じくドストエフスキーの原作で映画化された『カラマーゾフ兄弟』(1968)も観たのですが、これは映画自体は“もうちょっと出来てもいいかな‥‥”とおもったのですが、やっぱり話が骨太ですね。 この『白痴』に関しては、やはりメイド・イン・ロシアで観たいきもしたのですが、なんとなくジェラール・ピリップでも観てみたい衝動にかられて、ネットでDVDを探してるとそれしかなかったので結局フランス語でかたられる『白痴』にしてしまうことにしました。黒澤明のもののあるんですけど、これだとちょっと社会背景が違いすぎるかなと思ったりして。 実は『罪と罰』(1970)もDVDを購入したのですが、これはまだみてない。 映画的にはこのフランス版の『白痴』のほうが、私がみたい『カラマーゾフ兄弟』の映画よりは良く出来ていたかな。原作力は『カラマーゾフ兄弟』のほうが上なんでしょうけど、映画的にはこの2本だと『白痴』のほうがよかった。監督力の差がでたなって感じでした。 ただ、これまあくまで映画の話で原作の差ではありません。 お話はというと‥‥、純粋すぎるが故に心の病を抱えるムイシュキン公爵(ジェラール・フィリップ)はスイスでの療養を終えペテルブルグの将軍家のもとへやってきた。将軍家では娘のアグラーヤと大地主トーツキイ、トーツキイの元愛人ナスターシャと将軍の秘書(男)ガーニャの結婚話が進んでいた。ナスターシャのなかに不幸を直感したムイシュキンは彼女を助けようとするが、純真さゆえの彼の言動は逆に周囲の人間を混乱させるだけだった。そんなムイシュキンにナスターシャも惹かれるものを感じはじめていた。 ムイシュキン公爵とは、ドストエフスキーが描いた<最高に美しい人>の実体なのだろう、決して嘘のつけない人。他人のなかの心の痛みを共有できる人。決して自分からは他人を傷つけない人。彼には親が残した遺産があり経済的に、物質的に不安になることがない人。そして‥‥重力がない人。そう、彼には<重力>がないのです。しがらみがない。けっしてしがらみを身にまとわない。 しかし、彼女が選んだ選択は、商人ロゴージンとの結婚。彼はカネにものを言わせて、ガーニャから彼女を買い上げる形で彼女を手に入れた。彼女も、それでいいと思っていた。長い間、トーツキイの慰みものとして生きて来た彼女でも愛してくれるというその男、彼のものになってもいいと思った。ロゴージンも、彼女に愛されてなくても、彼女がそばに居てくれるだけでいいと思っていた。しかしナスターシャの心に中にはふつふつとムイシュキンへの想いが膨らんでいるのを感じとると、いたたまれない想いを抱くロゴージン。そんな彼の痛みの感じとり、彼女から離れる決意をするムイシュキン。一方でアグラーヤもムイシュキンに好意を持ちはじめて、そしてトーツキイとの婚約を破棄しても、彼との結婚を求めようまで考えていた。しかし、ムイシュキンの中にはナスターシャがいた。 これは愛というのかと言われれば、否としか言えないものなのだから、彼女の不幸さと潔さが、彼女を忘れがたき存在にしているだけというほうが正しいのだろう。 ムイシュキンもアグラーヤと一緒になってもいいと告げる、が、彼女は、彼を心を信用できない。そしてそれを確かめる為に、 ナスターシャとロゴージンのところへ、そのことを告げに向うことになった。 愛と選択するのか、それとも義理か? 開放を選択するのか、それとも支配か? ナスターシャ、アグラーヤ、ロゴージンのそれぞれの想いが1つの結果 に辿り着く。 そして、そこから展開するさらなる残酷な結末‥‥。 実は、物語を味のあるものにするには、ある法則を登場人物の人格のなかに組み込んであげれば良いのです。それは、 <1番大事なものをとっておいて、2番目に大事なものに従属する>の法則。 これは現実社会でもかなり登場します。というか、まさにこれこそが人間心理の基本法則だといってもいいと思われます。 人間っていうのは、実は自分の求めるものに向かわない傾向にあるのです。それを求めてしまって、叶えられなかった時には絶望に陥ってしまう。それは避けなければならない。そのために人間心のメカニズムとして、<1番大事なものをとっておいて、2番目に大事なものに従属する>の法則の法則が機能してるのです。そうすれば最大級の望みが崩れ去ることもない。そしてドラマの最後では、やっぱり2番目に大事なものを捨てさせて1番大事なものに向かわせればドラマは盛り上がるのです。でも、実際の人生のなかでこれガできる人はなかなかいません。でも、これが出来たら、人生というドラマはかなりドラマチックなものになるでしょう。 親近感を覚えるキャラクタ-にはほとんどこのメカニズムが存在しているものです。そして、単純な記号的なキャラクターにはこの法則は組み込まれていません。 お子さま向けのドラマだと、単純なほうが分かりやすいのであまり使われない法則だともいえますが、ある程度成熟した価値観をもった人を相手にする場合はこの法則をドラマの主要キャラに採用することは話にリアリティを持たせます。 この物語の女性の主人公、ナスターシアにはこの <1番大事なものをとっておいて、2番目に大事なものに従属する>の法則が採用され、 ムイシュキンは単純な記号的なキャラクターとして描かれています。このコントラストが、二つのシステムの根本的なすれ違いがこの物語の最大のポイントなのです。 うむむむ~~~~、映画を観ただけでも、ドストエフスキー燃えるぞ! やっぱ、ドロドロは素敵! できるならベルイマンにドストエフスキーものを映画化してほしかったなあ。
by ssm2438
| 2009-02-13 06:11
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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