西澤 晋 の 映画日記

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2009年 07月 04日

オー!(1968) ☆☆

オー!(1968) ☆☆_f0009381_2123763.jpg監督:ロベール・アンリコ
脚本:ピエール・ペルグリ
    リュシエンヌ・アモン
撮影:ジャン・ボフェティ
音楽:フランソワ・ド・ルーベ

出演:ジャン=ポール・ベルモンド
    ジョアンナ・シムカス

     *     *     *

『ゴルゴ13』のあと『コブラ』を2本だけやることになり、そのイメージ構築のためにジャン=ポール・ベルモンドの映画を何本かアマゾンから取り寄せた。ジャック・ドレー『パリ警視J』☆、ジョルジュ・ロートネル『警部』☆☆、フランソワ・トリュフォー『暗くなるまでこの恋を』☆、そしてロベール・アンリコ『オー!』。・・・どれも期待をしていたわけではなかったのだが、この『オー!』だけは意外と良かった。さすがロベール・アンリコ。

一番『コブラ』ムードがでてたのは『警部』。これはまあ良かったかな。いつのくだけた感じのジャン=ポール・ベルモンド。まるでゼロ戦パイロットのようなキャップとゴーグルをかけ、寒い冬道路を真っ白なマフラーなびかせながらスーパーセブンを駆る男。猫毛でぼてっとした鼻、愛嬌のあるたれ眼、そしていつもタバコか葉巻を咥えている。そしてジャンパーの下には6インチのパイソンを持っている。どうみてもコブラのイメージベースである(あくまで私が勝手にそう思ってるだけで、寺沢武一に聞いたわけではない)。そんなジャン=ポール・ベルモンドが麻薬組織の悪党どもをユーモアを交えながら痛快にやっつけていくという、けっこう安心してみられる映画。

しかし、映画的に一番おもしろかったのはロベール・アンリコの『オー!』。映画が始まって数カットみただけで、“ああ、この映画いいかも”と思わせるアンリコの情緒性。ほとんどのフランス映画の監督さんだと日本人はちょっととっつきにくい感を覚えるものだが、ロベール・アンリコだけは実に日本人になじみ易い感性があるのだ。それはあの<青春のほろにがさ>かもしれない。アラン・ドロン、リノ、バンチュラ、そしてジョアンナ・シムカス『冒険者たち』☆☆☆、ジョアンナ・シムカスの『若草の萌える頃』☆☆☆など、この青春のほろ苦さがあるんだよね。
例外にもれずこの『オー!』もそう。ほかのジャン=ポール・ベルモンドの作品みるとリラクタントなヒーロー像の主人公なのだが(それはこの映画にもいえることかもしれないが)、きちんと余裕がないところは余裕がない。これが他の『パリ警視J』や『警部』の主人公だとあきらかに空想的ヒーローなのでどうしても日本のアニメにありがちな余裕ぶっこき演技になってしまってつまらない。しかし、この『オー!』に関して言えば、誰もが理解できる悔しさをもっているからなじみ易い。<青春のほろにがさ>=<悔しさ>なんだろうな。多分ロベール・アンリコがいいのはきちんと<悔しさ>を描いてくれるからなのだろう。

オーというのはこの物語の主人公の通称。元レーサーで、今ではしがないチンピラ強盗、それも運転役専門でほとんどあごで使われている。そんな彼だが一人になると鏡をみて銃を構えてみたりして、かっこつけ男をを演じきれないくやしさをさりげない開放しいたりする。このへんの青二才ぶりがとってもいいんだ。
そんなオーがちょっと背伸びして付き合っているのがモデルのジョアンナ・シムカス。はじめは彼の素性はしないのだが、警察に捕まってから新聞に出てしまい彼女も知ってしまう。
脱獄したオーは徐々に力をつけていくのだが、結局は同業者にねらわれる羽目になり、ジョンナ・シムカスを呼び出してなんとか逃走しようとするが、彼女もはかなく殺され、銃撃戦の適役を撃退することはできるのだが、警察に逮捕されてしまう・・。

この映画はかっこつけたいと思う青二才の悔しさが詰まってる感性豊かな青春映画なのだ。

by ssm2438 | 2009-07-04 01:16 | ロベール・アンリコ(1931)


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