原作:松本清張
監督:増村保造
脚本:新藤兼人
音楽:坂田晃一
出演:宇津井健
ジョン・エクスティン
片平なぎさ
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この作品は映画ではなく、TBSが制作した松本清張スペシャルの一作品。しかし監督・脚本が
増村保造・新藤兼人のコンビだし、制作に
霧プロダクションがからんでいることから、テレビの2時間ペシャルといえどもかなりの出来ばえではないかと期待した。
実際作品の性質上、年代を昭和34年に限定せねばならず、これを再現すること自体がかなり難しそうに思えた。鷺宮や荻窪、善福寺川など、我々アニメ業界の活動拠点として日常と追っている場所が登場するが、原作に登場するその風景はほとんど人気のない沼や田んぼのなかに舗装されて内道路がとおっているというようなもの、今の風景からはとても想像できない。それを再現しようにもほとんど無理な話であり結局そこだけをセットでつくることになるのだが、全体図が見せられないのでじつに大雑把に見えるし説得力がない。ま、それはいたしかたないことか。。。
しかし当時の車をあつめてきているのは感心した。よくあの当時の古い車が動く状態でのこっていたものだ。今はCGで作れば作れるのだろうけど、1984年の年代を考えるとかなりの難題だったのだろう。それを判ってこの原作の映像化に踏み切ったのはかなり勇気ある決断だったといえる。
しかし、作品としては
宇津井健のやたらとテンション高い芝居が空回り周り気味だった。松本清張の作品はあくまで理詰めの状況証拠から真実が次第にみえてくるところが感動するのであって、本作のようにその気になって感情をぶつけているとおかしく見える。私は増村保造のファンだが、今回のこの芝居付けはいただけないなあ。
物語は昭和34年に実際にいきたスチュワーデス殺人事件を、
松本清張なりに独自解釈したものだ。ゆえにフィクションとして書かれているが、実際の神父の名や協会の名、善福寺川の名称も変更されている。
ただ、
片平なぎさはとても可愛くみえる。これは松本清張の作品にでてくる女性みんなにいえることなのだが、明らかに可愛らしすぎる。いじらしすぎる。これはあくまで清張自身の女性の理想像が投影されているのだろうと思う。