2010年 07月 18日
監督:スコット・ヒックス 脚本:ロン・バス スコット・ヒックス 撮影:ロバート・リチャードソン 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード 出演:イーサン・ホーク/リーヴ・カーニー 工藤夕貴/鈴木杏 リック・ユーン マックス・フォン・シドー * * * この映画、イーサン・ホークのせつなさがとてもいい。好きで好きでたまらない女が別の男と結婚・・という実にありがちなシチュエーションの映画なのだが、そのせつなさがいたいほど伝わる。ピーター・ウェアーの『いまを生きる』といい、この映画といい、こういうみずみずしいタッチの主人公には彼はあっていると思う。 そしてスコット・ヒックスの演出がまたしみじみとしていい。スコット・ヒックスのなかではこの作品が一番好きだ。この人の映画って、前作の『シャイン』、このあとの『幸せのレシピ』にしても、がんばって生きてきた人の心にシップ薬をやるようなひんやりと心地がいいやさしさがあるんだよね。大好きな監督さんの一人だ。今回の映画も、まさにしんしんとふりつもる雪がイーサン・ホークの魂の熱い叫びを封じ込めてるような感じ。恋愛感情としてホットな部分を完全に覆い隠してる演出だからこそ、この映画が素敵なのだろう。それをフィルムに記録しているのが『モンタナの風に抱かれて』などのロバート・リチャードソン。彼の画面は清涼として素敵だ。 工藤夕貴も実にあってた。これ、公開当時工藤夕貴が主演してるえいが・・というイメージ売ってしまったがためにいまいち受けなかったとおもうのだが、“『シャイン』のスコット・ヒックス”というアプローチならもっとうけたのではなかろうか。 <あらすじ> 第二次世界大戦が終わって10年がたとうかというワシントン州(アメリカ西海岸の一番北)。サン・ピエドロ島で第一級殺人の裁判が開かれる。容疑者は日系人のカズオ。漁師のカールを殺した罪に問われているのだった。 傍聴席に座る新聞記者のイシュマエル(イーサン・ホーク)。彼は少年時代にカズオの妻・ハツエ(工藤夕貴)と愛し合う仲だったが、太平洋戦争が二人を引き裂きハツエはカズオと結婚。イシュマエルも戦争で片腕を失っていた。日系人に対する差別が渦巻く法廷で、カズオは孤立していた。しかし独自の調査でイシュマエルはカズオが無罪だという証拠にたどりつく。ハツエをいまだに愛している自分、自分を裏切って他の男と結婚した彼女への封印している憎しみ。良心と過去の傷がイシュマエルをいたばさみにする。 男と恋愛至上主義な心のメカニズムと、女の情況支配主義的な心のメカニズムのきしみを描いた心の痛い映画。女にはこの痛みはわからないんだろうなあって思った。 映画自体は法廷サスペンスにあたるのかもしれない。でも、そんなことはどうでもよくって、描かれているのはイーサン・ホークのかなわぬ愛だ。ああ、切ない。
by ssm2438
| 2010-07-18 21:54
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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