2010年 05月 31日
監督:グリゴーリ・チュフライ 脚本:ワレンチン・エジョフ グリゴーリ・チュフライ 撮影:ウラジミール・ニコラーエフ エラ・サヴェーリエワ 音楽:ミハイル・ジーフ 出演:ウラジミール・イワショフ ジャンナ・プロホレンコ アントニーナ・マクシーモア * * * ソ連の映画には白樺の林が良く似合いますな。これといい、タルコフスキーの『ぼくの村は戦場だった』といい。 この映画、実はアニメ向き(実写向きではない)の成熟したスタンダードな演出のオンパレード。レイアウトも自然。狙いすぎた画面もなく、実に素直。この映画とピーター・チャンの監督した『ラブソング』は実に演出教本映画だ。 この映画に驚かされるのは、みんなの演技が自然体なのだ。その昔『鶴は翔んでゆく』をみたときには実にソ連の体制主義の説教映画になっていていやだったのだけど、この映画にはそんな感じは微塵もまい。その自然体で展開する話が実に純朴というか、純粋というか、清らかなのだ。もうほとんど忘れかけてた言葉だ(苦笑)。 敵戦車に追いつめられた少年兵アリョーシャ(ウラジミール・イワショフ)は凹地のとびこみ、そこで偶然みつけた対戦車砲で二台の戦車を戦車砲で砲撃、沈黙させた。その功績により特別休暇をあたえられた。帰郷の途中で、途中この石鹸をうちのやつにとどけてくれと、名も知らない兵士からたのまれ、その石鹸をうけとった。一人暮しの故郷の母に会うことを願って故郷への列車へのったアリョーシャは、一人の負傷兵に会った。戦争で足を失った彼は妻に会うのをいやがって、悩んでいた。しかし彼の妻はプラットフォームに迎えにきていた。涙にくれる二人を残してアリョーシャは旅を続ける。 この映画は戦場を描くのではなく、そのバックグラウンドの側で戦争をさりげなく描いていく。見知らぬ兵士が実家との妻にとどけたいものが石鹸である。実にソ連というか・・その昔『ハドソン河のモスコー』という映画を見たときに(あれは1980年代のソ連だったが)、靴を買うのに列が出来ているのを思い出した。それはソ連といわす日本でもおなじような状況だったのだろう。 貴重な肉のカン詰を看視兵にやって貨物列車にもぐりこんだ彼は、その中に隠れていた少女シューラ(ジャンナ・プロホレンコ)にびっくりする。荷物を放り出し逃げようとするシューらだが、すでに列車はうごきだしており、降りられない。荷物のないまま、アリョーシャとその貨車にとどまる。最初は警戒していたシューラも、やがて彼に好意を抱くようになった。彼女は負傷した許婚者を病院に訪ね、故郷に帰るため秘かに貨車にのったのである。 この話、彼女がでないことにはどうにも面白くない。彼女とのふれあいがあるからこそ、ロードムービーとして成立したのだ。窓の外をながれる白樺の林がじつにすばらしい。 途中水くみに出て列車をやりすごしたりしながら、二人の旅は続く。アリョーシャは戦線で見知らぬ兵から託された石ケンを持って、彼の留守家族を訪ねる。苦しい生活の中で、兵士の妻は他の男と同棲していた。実にせつない。こういう痛みも彼女と分け合えたからこそ素晴らしい映画になったのだろう。 やがてアリョーシャとシューラは、互の住所もしらぬまま別れた。 ほんとにこれで終わりなの・・?って感じで実に名残惜しかった。 そしてまた白樺の林が車窓をながれる。 もう休暇は残り少ない。戦線への帰途の時間を考えるともう余裕はなかった。アリョーシャは母親ともほんの一瞬しか会っていることができなかった。畑で働いていた母は、涙で息子のトラックが遠ざかるのを見送った。そして、アリョーシャの姿は二度と、もう故郷に戻らなかったのである・・。 人生の悲喜こもごもあるのだけれど、実にさわやかな映画だった。 普通の映画なのだけど、実に忘れがたい映画だ。 グリゴーリ・チュフライ、素晴らしい!
by ssm2438
| 2010-05-31 05:35
| G・チュフライ(1921)
|
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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