
監督:黒澤明
脚本:橋本忍
小国英雄
黒澤明
撮影:中井朝一
音楽:早坂文雄
出演:三船敏郎
志村喬
千秋実
清水将夫
* * *
原爆シンドローム3部作といえば
イングマル・ベルイマンの
『冬の光』、
アンドレイ・タルコフスキーの
『サクリファイス』、そしてこの
黒澤明の
『生きものの記録』だろう。個人の力では到底太刀打ちできない核兵器の恐怖に対しての姿勢を問うた映画である。
けっきょくこの問題に関しては、すべての人は、人の良心を信じるしかない。そしてほとんどの人はそれを信じることが可能である。しかし、それが可能でない人はどうするのか・・・? それを扱ったのがこの3本の映画。
ただこれを言い出したら道だって歩けなくなる。人間の理性がまけて誰かが核のボタンを押す確率と、道を歩いいて酔っ払いの車が自分に突っ込んでくる確立を比べたらどっちが高いか分りそうなものだ。核の恐怖だけを特別に取り上げることにそれほど意味があるのかと思うのだが・・。映画の基本コンセプトに疑問を感じる一作。まあ、これは
フリードキンの
『BUG/バグ』みたいなものだ。こちらの映画では自分の体の中に小さい微生物がうじゃうじゃいると思い込んだ男の妄想が肥大化していく映画。見て「お前ら勝手に腐ってろ!」って思ってしまった。それと同じ感じ。
<あらすじ>
都内に鋳物工場を経営しかなりの財産を持つ中島喜一(
三船敏郎)は、原水爆弾とその放射能に対して繊細なまでに恐怖心をもっている。地球上で安全な土地はもはや南米しかないとして近親者全員のブラジル移住を計画、全財産を抛ってもそれを断行しようとしていた。子供たちは、喜一を放置しておいたら、近親者全員の生活も破壊されるおそれがあるとして、家庭裁判所に申請、喜一の資産運用を制限する仮裁定を得た。しかしその後もブラジル行きの計画を実行していく喜一に慌てた息子たちは再申請し、喜一の計画は完全に挫折してしまった。極度の神経衰弱と疲労で喜一は衰弱していった。近親者の間では万一の場合を考えて、中島家の財産をめぐる暗闘が始まった。工場さえなければ皆も一緒にブラジルへ行ってくれると考えた喜一は、工場に火を放った。灰燼に帰した工場の焼け跡に立った彼の髪の毛は一晩の中に真白になっていた。数日後、精神病院に収容された喜一を原田が見舞いに行くと、彼は見ちがえるほど澄み切った明るい顔で鉄格子の病室に坐っていた。彼は地球を脱出して安全な病室に逃れたと思い込んでいるらしかった。