2010年 05月 23日
監督:クシシュトフ・キエシロフスキー 脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ クシシュトフ・キエシロフスキー 撮影:エドワード・クロシンスキー 音楽:ズビグニエフ・プレイスネル 出演: ヤヌシュ・ガヨス (カルロ) ジュリー・デルピー (ドミニク) ズビグニエフ・ザマホフスキー (ミコワイ) * * * 白=平等・・というより<対等>・・かな? 劣等感をもつ男が<対等>を勝ち取る話。 フランス国旗の象徴「自由、平等、博愛」をテーマに描いたクシシュトフ・キエシロフスキーの『トリコロール3部作』の2作目。1994年2月のベルリン国際映画祭では監督賞を受賞している。一応3部作といわれるが、物語自体につながりがあるわけではなく、ひとつひとつが独立している。ただ、そのなかで、ビンを回収箱にいれる老婆が共通して登場する。そしてさりげなく、『トリコロール/青の愛』のジュリエット・ビノッシュが登場しているらしい(私は確認出来なかった。いつかDVDで見る機会があったら確認せねばなるまい)。時間的・空間的には同じ時間・空間に存在した3つのドラマだといえるのだろう。それがさりげなくリンクしている。ただ、そのリンク事態が大きな意味をもっているわけではないので、そのなかの1本だけをみても成立しているので心配はご無用。 この映画はさえない男の見る夢なのだろう。憧れを踏みにじられた男の復讐。確かにしてみたいものである。 しかし、普通は結婚する以前にその相手とセックスはするものであり、“H”をした段階で憧れは砕けるものだ。この映画のように結婚してからも、妻に憧れを持ち続けるというのはかなりありえない状況設定で、それは物語の都合上の設定なのだろう。なぜ、これを既婚者の設定で作らなければならなかったのだろうか? 結婚が決まった二人だったが、夫の劣等感からセックスが出来なくなり、挙式も決まっているのにそれがキャンセルされた惨めな男の話・・・でよかったのでは??と思うのは私だけだろうか? 感受性重視のキエシロフスキーにしては珍しく、ストーリーテリングをメインにつくられた映画だったような気がした。 <あらすじ> パリの裁判所。どういう経過で二人が結婚したのかはわからないが、その裁判所でフランス人のドミニク(ジュリー・デルピー)の夫カルロ(ヤヌーシュ・ガヨス)は、性的不能を理由に離婚を申し立てられる。ポーランド人のカロルはフランス語もほとんど分らず、通訳を立てての裁判にもどかしさを感じていた。「もう少し時間がほしい」というカルロに、ドミニクはもう愛してない、と言い捨てる。裁判の結果はどうなるか決定は出ていないが、カルロの荷物を車から降ろすと、ドミニクは走り去ってしまった。 途方にくれるカルロ。ドミニクが銀行口座を解約したのだろうか・・、クレジットカードも使えなくなり、ポケットのなかの小銭だけで路頭にまようカルロ。ポケットのなかに妻の経営する店の合鍵があるのをみつけ、とりあえずそこで夜露を凌いだ。朝になって店を訪れたドミニクは鍵を返すように要求、しかしそれを拒むカルロにふれてみると股間を勃起させていた。もしかしたらセックスできるかも・・と挑んでみるがやっぱりダメ。悲しくおいだされるカルロであった。 その後も執拗にドミニクに電話をするカルロだが、電話口のむこうではどこかの男とセックスをしながらあえいでいる自分をこえを聞かせるドミニクがいた。 「性的に不能だから離婚」というのも日本人の私としてはいまひとつ理解しがたい。本来その原因は他にあるはずだし、その原因もカルロの精神的なもので、それはドミニクに対する劣等感なのだろう。この映画は、その劣等感をなんとか払拭する男の話として構成されている。 この映画のどうにもしっくりこない部分は、ドミニクがどこまで本気でカルロのことを好きだったのか、それが分らないことだ。最後のほうでは、カルロの葬式で涙を流すドミニクがいたりする。女は永遠に謎な生き物だ。 また、この映画でよいのは、カルロが地下鉄の通路でしりある同じポーランド人のミコワイ(ズビグニエウ・ザマホフスキ)の存在だ。彼も人生に絶望して、自分を殺してくれる人を探してた。ポーランドに帰ったカルロは、ミコワイに再会、ミコワイの願いをかなえることをする。やくざな両替屋の用心棒となり、懐に拳銃を携帯していたカルロはそれでミコワイを撃つ。がっくりとくずれおちるミコワイだが、その銃には弾は入っていなかった。死んだと思ったミコワイは生きていた。 「まだ本当に死にたいか?」と問われたミコワイは「いいや」と応えた。その瞬間からミコワイは生まれ変わった。死を欲していたミコワイは、その瞬間から生きることしか選べない自分を発見したのだろう。このエピソードは実にすばらしかった。 その後はなんとか金持ちになってしまったカルロは、遺産の受取人をドミニクにし、ある東欧の国から路面電車にはねられて死んだ男の死体を不正に買取り、自ら死を偽って葬儀を行いドミニクをポーランドへよびよせる。埋葬させる棺おけをみながら涙をみせるドミニク。その夜、彼女がホテルに戻ってみるとそこにはカルロがいた。今の2人はセックスが出来た。 カルロが立ち去った後、彼の死に不審を抱いた警察がホテルに現われ、ドミニクを逮捕してしまう。拘置所の窓からドミニクを見るカルロ。外のカルロをみつけ身振りでコミュニケーションをとるドミニク。そのしぐさに愛がこもっていた。その愛を感じてカルロは涙するのだった。
by ssm2438
| 2010-05-23 07:03
| K・キェシロフスキー(1941)
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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