西澤 晋 の 映画日記

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2010年 10月 08日

ソフィーの選択(1982) ☆☆☆☆

ソフィーの選択(1982) ☆☆☆☆_f0009381_9212647.jpg監督:アラン・J・パクラ
脚本:アラン・J・パクラ
撮影:ネストール・アルメンドロス
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ

出演:
メリル・ストリープ (ソフィー)
ケヴィン・クライン (ネイサン)
ピーター・マクニコル (スティンゴ)

       *        *        *

人生は、選択の積み重ねだ。

「選択」というのは重い言葉である。選択したことにより、それ以降の人生では、その選択し自分を肯定して生きていかなければならなくなる。それがその人のキャラクターを構成していく。生まれた時からひとそれぞれが授かった気質(基質?)は恒久的なものだが、その人の人格はその後の人生でその人が下した選択の積み重ねでさらに違ったものへと構築されていく。
しかし・・・すべきでない選択をしてしまったときは・・・? それを選択した事実は消せない。その時はひたすら自己否定の人生になっていく。この映画のソフィーの選択は、そんな選択だった。

そのむかし、NHKの大河ドラマの脚本などを書いていたジェームス三木が、こんなことを言っていた。「ドラマとは選択の連続だ。一番大事なモノの為に2番目を捨てさせる。2番目に大事なものが大きければ大きいほど、感動は大きくなる」・・と。戦国時代の話ではじつによくある展開だ。それを求めれば、代わりに親しい人を切らなければならない。その苦渋の決断がドラマをもりあげる。

しかし、選択したくない時がある。バリー・レビンソンの映画で『バンディッツ』というのがある。このなかで、ケイト・ブランシェットブルース・ウィリスビリー・ボブ・ソーントンと仲良くなってしまい、どちらを選ぶのか迫られる展開になる。彼女が出した言葉は「私、選択したくないのよ」。近年まれにみる「ふざけるな!」と思わせてくれた言葉だった。しかし・・・こちらの『ソフィーの選択』の話は重すぎた。
この映画では、自分の子供2人のうち一人はガス室送りにされる。ソフィーはそれを選ばなければいけない。選ばなければどちらの子供もガス室送りである。ソフィーはとっさにこの子を連れてってと妹のほうを差し出す・・。残酷である。

監督はアラン・J・パクラ。いつも社会に圧迫されていく個人を描いている。この映画でもいそうだ。珍しいことに撮影はいつものゴードン・ウィリスではない。なにか別の作品で一緒に仕事ができなかったのだろうと推測する。で、立てた撮影監督がなんとネストール・アルメンドロス『天国の日々』でみせてくれた彼の画面の荘厳さは類をみないものだった。ウディ・アレン同様に、パクラも絵作りを上手い撮影監督にこだわる監督さんだ。
音楽は『普通の人々』マーヴィン・ハムリッシュ。これもいい。
スタッフ的には文句のない布陣である。

個人的にはメリル・ストリープが生理的にダメなので、長らく見なかった映画のひとつだったが、映画の質自体はすこぶる良い。『アリー・マイラブ』で奇人の天才弁護士ジョン・ケイジを演じたピーター・マクニコルがこの映画ではまじめな好青年として登場している。

<あらすじ>
第二次世界大戦が終わってから2年後のニューヨーク。作家志望の青年スティンゴ(ピーター・マクニコル)はブルックリンのアパートに引っ越してきた。そこで自由で退廃的な人生をすごしているソフィー(メリル・ストリープ)と知り合う。彼女の腕には、強制収容所の囚人番号の烙印があった。彼女は、ある製薬会社につとめるネイサン(ケヴィン・クライン)という生物学者と一緒に住んでいた。三人はコニー・アイランドで終日遊び、親友となった。
スティンゴはネイサンの紹介でレズリーという女の子を紹介されたが上手くいかない。心身ともに疲れてもどった彼にソフィーが寝酒を誘う。父と夫がドイツ軍に拉致されて処刑されたこと、病気の母のため闇市でハムを買ったことがばれてアウシュヴィッツに送られたこと、彼女は収容所長ヘスの秘書にされ屈辱の中で家政婦のように働かされたこと、娘のエヴァは抹殺され、息子のヤンのその後は分からないこと。解放後、教会で自殺を図ったことを彼女はスティンゴに話した。
ネイサンの部屋へ入ると、ナチ関係の本がいっぱいだった。ユダヤ人である彼はナチの犯罪が許せないのだ。ある日スティンゴは、ネイサンの兄ラリーから弟は妄想性分裂症であると聞かされる。精神の安定しないネイサンからソフィーを助け出すために、スティンゴはソ彼女を連れてワシントンに逃げる。ホテルの一室で、ソフィーに求婚するスティンゴ。ソフィーが彼に告白する。
アウシュヴィッツの駅でナチの医者が3人の前に来て、子供を1人だけ手放せと迫った。出来ないと言うと、医者は、では2人とも焼却炉行きだと冷たく言いはなつ。無情な選択を迫られ、ついに娘を連れてってと、エヴァを差し出した・・ことを。
ソフィーとスティンゴはその夜、結ばれた。翌日ソフィーの姿はなかった。ブルックリンにもどったスティンゴは、ソフィーとネイサンが自殺したことを知る。

by ssm2438 | 2010-10-08 09:21


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