西澤 晋 の 映画日記

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2010年 11月 04日

マラソン マン(1976) ☆☆

マラソン マン(1976) ☆☆_f0009381_19105257.jpg監督:ジョン・シュレシンジャー
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
撮影:コンラッド・L・ホール
音楽:マイケル・スモール

出演:
ダスティン・ホフマン (ベーブ)
ローレンス・オリヴィエ (クリスチャン・ゼル)
ロイ・シャイダー (ドク)
マルト・ケラー (エルザ)

       *        *        *

シナリオ段階で失敗しているような気がするのだが・・。

ナチ戦犯が画策する事件をめぐって、たまたま、ニューヨークである交通事故をみてしまった男(ダスティン・ホフマン)のまきこまれ型のサスペンス。監督は『真夜中のカーボーイ』ジョン・シュレシンジャー。全体のムードは悪くない。しかし、映画が主人公の主観で展開されないので「結局なにがいいたかったのだ??」で終わってしまっている。いくつかのイベントがパズル的に語られつつ、出来上がって絵をみると一つの絵に成っているというような構成なのだが、その出来上がった絵をみても、「それがどうしたの?」って感じなのだ(苦笑)。

最近読んだ『深海のyrr(イール)』という小説があるが、なんでもこれがハリウッドで映画化されるそうな。この小説というのが、境各地で点在する謎の生命体が起こした事件の遭遇しながら最後はインディペンデンスにあるめられ、未知の生命体との接触に挑む話になっていく。この小説を読んで、それが映画化されるときいたtき、この話は主人公目線に絞り込まないと、物語の求心力がなくなるなあって気がした。
そしてこの『マラソンマン』が、その求心力がなくなった映画のよい例なのだ。
物語の主人公、ダスティン・ホフマンは、マラソンのトレーニング中にある交通事故を目撃する、それがきっかけとなり、ナチ戦犯連中が画策しているダイヤのダイヤ密輸事件に巻き込まれる。しかし、物語は世界各地で小粒に展開され、映画が始まった当初はなにが起きつつあるのかよくわからない。たしかに小説としてはよくあるタイプだが、原作者が脚本を書いているのだが、映画としては失敗してるとしか言いようがない。誰が主人公なのか分らないまま、誰に感情移入していいのか定まらないまま物語が展開するのである。
やっかいなのは、ナチの戦犯グループに拉致されて拷問をうけるダスティン・ホフマンが主人公っぽくみえてしまうのだ。しかし彼にしても、小説のなかではそれほど重要な主人公としては存在してないのではないだろうか。ひとつの物語の登場人物Aでしかないのである。それをなんとなく主人公っぽくなってしまっているので、一応そのつもりになって見るのだが、やっぱり総合的にみると登場人物Aでしかないのだ(苦笑)。
おかげで悪人達がみんなやられても高揚感もなく、「だからなんだったの?」って感じだけがのこる。

で、あらためて冷静になってこの映画をフカンから眺めてみると、結局この物語は、
ナチの戦犯グループが行おうとしていたダイヤ密輸を、たまたまそこ絡んできてしまったマラソンのトレーニングをしている青年のおかげで、おじゃんになった・・って話。イベントを客観的にみるお話でした。

やはりこの映画の語り草は、ダスティン・ホフマンの拷問シーン。歯科医であるローレンス・オリビエがダスティン・ホフマンを椅子にしばりつけて、口をあけさせ、歯と歯の神経をうぐりぐりがりがりいじめるのだが、見てる間に手に汗を握ってしまう。
その昔御茶ノ水の医科歯科大学で、根っこがかぎ状になっている親知らずの抜歯し手術をうけたのだが、2時間以上も視察台にのせられて格闘。終わったときには背中はもちろん、足のうらにじっとりと汗をかいていた。あの悲惨な2時間とイメージがダブルが、それでもあの時は麻酔があったから良かった。でもほとんどきかなかったけど。おかげで何本もうたれて次の日まで口の感覚がへんだった。

もうひとつ、この映画で忘れられないシーンは、ダイヤをもったローレンス・オリビエが待ちの中で戦犯と知られてしまい、老婆に追われるシーン。ダイヤを持ち逃げしようとしていた彼が、街中でユダヤ人の老婆に観止められる。「あなたはあの時の・・・ナチの将校・・・」って。そしたら周りの人たち(多分ユダヤ人が多いのだろう)が、彼を復讐の目で観始める。周りの人みんなから復讐の憎悪がたちこめるなか、なんとか逃亡するローレンス・オリビエというシーン。あの恐怖感はなかなか良かった。

全然関係ないが、マルト・ケラーが見られたのは嬉しい。『ブラック・サンデー』のお姉ーちゃんであり、『ボビー・ディアフィールド』のヒロインでもある。マイナーだが忘れがたい女優さんのひとりだ。


物語をマラソンマンの立ち位置から主観的にまとめてみると・・・、

ニューヨーク。マラソン・トレーニング中のベーブ(ダスティン・ホフマン)はある交通事故を目撃する。その後、ベーブは図書館でエルザ(マルト・ケラー)と知り合うが、公園でデート中2人の男に襲われる。ベーブがこの事件を手紙で兄のドク(ロイ・シャイダー)にしらせる。ドクはアメリカ政府機関の男だった。数日後、ベーブは、ドクを交えてエルザを交えた3 人は食事をするドクは何者かに殺された。そして、ドクの同僚ジェニウェイ(ウィリアム・ディベイン)に兄の正体を知らされ再び驚かされる。やがて公園で拉致されたベーブはどこかの地下室に連れこまれ、ナチの残党ゼル(ローレンス・オリヴィエ)から拷問をうける。銀行の貸金庫にゼル自身が宝石を受け取りに行っても安全かどうか、ベーブから聞き出そうとしたのだ。
あまりの苦痛に気を失ったベーブをジェニウェイは助け出すが、それもベーブから秘密を聞き出そうとするワナ。ジェニウェイも敵なのだ。やっとの思いで逃げ出し、エルザの協力で郊外の家に隠れるが、そこはゼルの兄の家。エルザも一味だった。再び現われたジェニウェイの一味どたばたあり、なんとか生き残ったベーブは、貸金庫からナチ時代の遺物のダイヤを持ち出したゼルと対峙する。

歯科医であるゼルに拷問の時にさんざん歯の神経をいたぶられて失神したベーブは、彼に銃つきつけて、持ちだしたダイヤを「呑め」という。ダイヤを断腸のおもいで呑むゼル。その後てきとうに格闘などあって最後は階段からころげおち、自らのナイフで命をおとすゼル。

by ssm2438 | 2010-11-04 09:35


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