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2011年 01月 03日
監督:ルネ・クレマン脚本:ポール・ジェゴフ/ルネ・クレマン 撮影:アンリ・ドカエ 音楽:ニーノ・ロータ 出演: アラン・ドロン (トム・リプレイ) マリー・ラフォレ (マルジュ・デュヴァル) モーリス・ロネ (フィリップ・グリーンリーフ) * * * This is the アラン・ドロン! ・・である。 ルネ・クレマンの中でも最高傑作だと思う。そしてそれはアラン・ドロンにとっても言えることだろう。 劣等感と変身願望、マゾヒズム‥、人間の根幹にささやかに巣食っているが本来表面化しない人間性の陰部を、表面化を極力おさえつつ臭わせる演出が実にすごい。 個人的にはアラン・ドロンに魅力を感じたことがないのだが、彼の映画の中でこの1本だけは傑出している。この映画にくらべたら他のアラン・ドロンの映画はまったくといっていいほどカスといっていいだろう。 表面的には完全犯罪の話である。・・が、それはどうでもいいことだ。 この映画がこれほどまで刺激的なのは、猛烈な劣等感からくる、変身願望の達成だろう。 この物語の主人公トム・リプレイ(アラン・ドロン)は貧乏なアメリカ青年。そんなリプレイがいつも一緒にいるのがフィリップ(モーリス・ロネ)という金持ちのどら息子。彼はナポリに部屋を借り、職につくこともなく、親の金で毎日遊び歩いていた。 そんな息子に業を煮やした親が、昔からの旧友であるリプレイに5千ドルの契約で、息子を連れ戻すようにヨーロッパによこしてきたというシチュエーション。(1$=100円換算で、50万円。当時の値段なので、その10倍くらいの価値があったかもしれない) さらにフィリップにはパリ生れのマルジェ(マリー・ラフォレ)という彼女がいた。決してフィリップが彼女を大事にしているとは思えないが、そんなフィリップをマルジェが慕っている。トムにとって、彼らの生活は決して届くことのない、理不尽で在りえない雲の上の生活だったのだろう。子供の頃からの旧友だが、フィリップはトムのある種の卑しさを嫌っていた。そんななかで、トムの心の中にはさりげなく殺意が育っていたのだろう。この映画のスゴイところの一つは、このアラン・ドロンの発する自分に限界を感じてしまっている人間の卑しさが実ににじみ出ているところなのだ。自分にはなにもない。しかしフィリップは、自分がほしいものを総て持っている。自由になるお金も、マルジェも。その圧倒的な劣等感は、すでにリプリーに自分を自分の思うものに進化させていくという地道な努力などさせる健全さを完全に奪い、出来ることなら彼になりってしまいたい思うようになっている。 ほとんどの人は<変身願望>というのはそれなりには持っているものだが、現実的に力を得るには自分自身を成長させていくしかない。名ので現実の中で努力し、経験をつみ、少しづつ自分を強くしていき、そんな自分の在り方を自己肯定して生きていくしかない。しかし、強くなるための努力があまりにも強大に見えてしまったものはそのとてつもなさに自己進化を放棄し、このままでいい、弱いままでいい、自分は誰かの下でいい・・と思い、そう思うことのほうが楽になってくる。自分の惨めさをいとおしく思うようになる、仕えること心の安らぎを見出す。 そうなった人間でも、心の中には憧れがある。強くなる努力をしないで、そうなりたい・・という憧れ、それが<変身願望>となる。リプリーは、このメンタリティに至っているのである。 フィリップを殺すにいたる前の、二人のやり取りも実にいい。マルジュを伴って友人のパーティーに向うフィリップは、いつものようにトムと連れてヨットに乗り込む。マルジュと“H”をしたいフィリップは、トムに操舵をまかせ船上においやると、船室へのドアを閉め抱擁を始める。嫉妬する天窓から中の様子がみえるトムは嫉妬し、乱暴に操舵し船を揺らせる。起こったフィリップは、トムを備え付けの小船においやり、船外へ流してしまう。なんとかロープを引き寄せヨットにもどろうとするがロープが切れてしまい一人絶望しながら海上にとりのこされてしまう。 事を終えたフィリップが船上にでてみるとトムを隔離したはずのボートがない。あわててユーターンして戻ってみると、炎天下のなか太陽に焼かれて背中が真っ赤になったトムが海上にのこされた小船の上でぐったりしている。さすがに罪悪感を感じるフィリップ。看病するマルジェ。トムのセーターを取りにいったフィリップは、トムが自分の口座の数字を逐一メモしている紙を発見してしまう。 以前にトムが、自分の服と靴を履き、自分のしゃべり方をまね、鏡の中の自分にキスするトムの姿をみたことがあった。“もしかしたらトムは、自分の人生そのものを欲しているのかもしれない・・・”、フィリップはトムの水面下の欲求に恐怖を覚える。 そして身体が回復してきたトムに聞いてみる。 「ボクを殺したいと思っただろう?」 「今回は思わなかった・・」 そのあとマルジェとささいなことからケンカになり、マルジェは船を下りてしまう。船の上でトムと二人になったフィリップ。ポーカーをしながら、自分の殺人計画とその後の展望を聞いてみる。 自分は賢いからきっとやれるとさらりというトム。2千500ドルかけてを申し出るフィリップ。わざとまけてある程度のお金をつかませ、その計画をやめさせようとするが、自分の手札はキングのペアと10のスリーカード。このままでは勝ってしまう。トムがよそ見をしている間に自分の有利な手札を捨てて負けのカードにするが、トムは見破っている。 かまわず2500ドルの小切手を切ろうとするが、全部いただくと、冗談のようのさらりと言うトム。 小切手に自分のサインを書いてみせ、まねが出来るのかと言うフィリップ。 今は出来ないが練習すればというトム。 サインが偽造できても手紙はかねないというフィリップ。 タイプライターがあるというトム。 「すでにお前を殺すことは頭のなかでシュミレートしてあるんだ」ということを、その空気で表現するルネ・クレマン。フィリップにしても「なんとか殺さずに生かせてくれないか」という願いを、それを表面化することなく行われる心理的言葉のやり取りが素晴らしい。 そしてあっけなくプスっと胸をさして殺し、そのあとあいきなり洋上の風の音と並みのざわめき、そのなかで死体を毛布に来るに碇をワイヤーでくくりつけて沈める準備を鼻息荒く行うアラン・ドロン。チェンジ・オブ・ペースも実に素晴らしい。そんなことしてるとマストにボコッと不意にアタックされて死体と一緒に海に落っこちてしまう。なんとかワイヤーをつたって命からがらヨットに戻って、ワイヤーを解くと毛布にくるまれた死体は水没しながら後方に消えていった。そして船室にもどり洋ナシ(?)にかぶりつくアラン・ドロン。 後に第二の殺人を犯すことになるのだが、そのあとは宿屋のおばちゃんに「あの鶏肉食ったかい?」と言われて、思い出したようにそれをレンジから出し喰うアラン・ドロンというカットがある。小心者がなんとか平常心を取り戻そうとする必死のあがきが鬼気迫るほど素晴らしい。 ルネ・サディスト・クレマン一世一代の大傑作である。
by ssm2438
| 2011-01-03 00:45
| ルネ・クレマン(1913)
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![]() 主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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