
監督:森崎東
脚本:山田洋次/小林俊一/宮崎晃
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純
出演:
渥美清 (車寅次郎)
新珠三千代 (お志津)
香山美子 (芸者染奴)
* * *
今回は第一作目の脚本を山田洋次と共に書いた森崎東が監督をやっている。
監督が代わると微妙にニュアンスが変わるものだ。特に山田演出と違うのは、絵作りだろう。こういう撮り方は
山田洋次はしないだろうなというようなカットがけっこうあった。
たとえば、お志津さんの弟と対決のシーン。森崎東の画面といのは、東映作品(たとえば
『キーハンター』とか
『仮面ライダー』とか)の対決シーンなのだ。オーバー・テンションのギャグとして見せようとしているのだろうが、こういう意図的すぎる演出というのはなんか・・・ちょっと
『男はつらいよ』ではないような気がした。たぶんこのシーンを山田洋次が撮るとしたら「対決」ではなく「いざこざ」として撮っただろう。
これが『男はつらいよ』でなければ、森崎東の画面のほうが好きなのだが、やっぱりこのシリーズのなかの一本としてみると、違和感を感じたかな。
あと音楽の趣味もどことなく違うのかな。あと、その音楽の入れのタイミングとかも。
ま、監督が違うのだが違う作品になるのは当たり前で、それを承知で監督にしてるのだから、あまりその点とやかくは言うまい。いや、もう言ってしまったか(苦笑)。
<あらすじ>
いつものように《とらや》でひと騒動あったあと、旅にでた寅次郎は、三重県の湯の山温泉にいた。旅先の伊勢で病に倒れた寅次郎は、そこでお志津さん(
新珠三千代)という温泉宿の女将に出会い、手厚い看護を受けたことが縁で、病が癒えてからも湯の山温泉に留まり番頭として女将のために一生懸命働いていたのであった。
そんなある日、志津の弟・信夫(
河原崎建三)が恋仲の芸者染奴(
香山美子)に逢いに帰ってきた。染奴の父親は障害者で、その治療代のために、ある男の妾になるしかないというのだ。言語障害かなにかで「あああ、ひいいいいいひいいいいい」としか言えない染奴の父の言葉をなぜか寅次郎は通訳できてしまう。やがて寅次郎によって通訳された父の言葉を聴いて、染奴は信夫とともにかけおちするのだった。
このシーンはなかなか泣けるんだ。
一方、女将の志津にも縁談がまとまって、寅はまたも失恋の憂目にあった。