2011年 03月 31日
監督:山田洋次 脚本:山田洋次/朝間義隆 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演: 渥美清 (車寅次郎) 榊原るみ (花子) 光本幸子 (冬子) ミヤコ蝶々 (寅次郎の実母・菊) 田中邦衛 (福士先生) * * * 『男はつらいよ』の悪い部分が全部でた映画。 個人的には、『男はつらいよ』の車寅次郎というキャラクターにはまったく魅力を感じず、このような人物にもなりたいと思わない、私の理想からするとかけはなれた存在なのだ。そんな私がこのシリーズをみているのは、ひとえに、山田洋次の演出のすごさを感じるためといっていいだろう。しかし、今回のこの話は、見ていて嫌な想いばかりだった。なんでこんな話になってしまったのか・・・、語り口がひどい。 で、スタッフチェックしてみたら、その後常連となる朝間義隆がこの作品から脚本を書いている。初めての作品だったので、方向性がわかってなかったのだと思われる。それを山田洋次が修正し切れないまま作ってしまったのだろう。 しかし、この人が才能ないわけではないはずだ。その後のほとんどの作品は浅間義隆が書いていて、このシリーズに多大に貢献している。たまたま1本目で方向性が合ってなかったってことだろう。 なにがひどいかって、とにかく、寅次郎が低脳すぎる。ひたすらうすらバカ。寅次郎というのは、確かに学力はなさそうだが、低脳というわけではない。なにが大事かはそのつどそのつど理解しているキャラクターだと思う。が、この作品においては、ただの低脳として描かれてしまっている。 久々に実母の菊とあう帝国ホテルのシーンも、ひたすら低脳。そこに行くまでの車(博が運転し、さくらが助手席にすわり、寅次郎が後ろの席にいる)のなかでは、足をさくらの席のうえになげだしてみたり、ホテルのトイレの使い方がわからず、浴槽に放尿してみたり、あげくのはてはベッドがめZらしく餓鬼の様にとびはねてる。今回のマドンナ大田花子(榊原るみ)とのやりとりも、低脳同士だから理解しあえるという雰囲気で、彼女の世話をしていることがとっても幸せな寅次郎だが、かなりいきすぎているところもあり、寅次郎の行為が彼女のためになってるとも思えない。相手が知能障害のある弱者であるがゆえにみせる寅次郎の独占欲もかなり気持ち悪い。そんなものは本来もっていないはずのキャラクターなのに・・・。 挙句の果てに、花子から「おら、トラちゃんの嫁っ子さなりてえ」と言われるとのぼせ上がり、結婚のことまで考えるのだが、そこに生活観はまったくなくどうやって生計を立てるのかもまったく考えていない。こんなことは寅次郎のキャラクターとしてはありえないのだ。 <あらすじ> 寅次郎の実母・菊(ミヤコ蝶々)が《とらや》をたずねてくる。以前寅次郎が菊にあてて出したはがきで、寅次郎が結婚すると書いていたらしい。どの時期にかかれたかは分からず、誰のことなのかも分からないのだが、現時点ではそんな話はないのは確かである。そんな嫁がきてくるはずもない寅次郎が、旅先で知的障害者の大田花子(榊原るみ)と出会う。 一度は故郷の青森に帰るように送り出したものの、花子は《とらや》を尋ねてくる。おりよく《とらや》に帰ってきた寅次郎は花子と再会、彼女の面倒をみてやることが楽しくなってくる。やがて結婚の妄想まで夢見るようになるが、経済力のかけらもない寅次郎が知的障害者の花子と結婚することが良い事だとも思えない。そんなときに花子の恩師である福士先生(田中邦衛)が《とらや》をたずねてきて、花子を引き取って帰る。 「おまえら嫌がる花子を無理やり連れて行かせたんだろう」と激怒する寅次郎だが、故郷にかえった花子を訪ねるとそこには幸せを満喫している花子がいたらしい。自分の存在価値を失った寅次郎は自殺をほのめかすような手紙を、それも速達で《とらや》に送ってくる。しんぱいになったさくらが福士先生のいる学校を訪れてみると、花子が用務員さんとして嬉々として働いていた。帰りのバスで人々の心配をよそに温泉につかっていたという寅次郎に会い、ほっとするのであった。 ちなみに、今回のマドンナの榊原るみは『帰ってきたウルトラマン』の前半部のヒロインでもある。個人的にはまったく好みではなくぴくりとも感性に触れるところがないのだが、世間では好きなひともいるらしい。うむむむ、人の趣味は分からんものだ。
by SSM2438
| 2011-03-31 08:41
| 男はつらいよ(1969)
|
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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