西澤 晋 の 映画日記

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2011年 12月 10日

女が階段を上る時(1960) ☆☆☆

女が階段を上る時(1960) ☆☆☆_f0009381_125320100.jpg監督:成瀬巳喜男
脚本:菊島隆三
撮影:玉井正夫
音楽:黛敏郎

出演:
高峰秀子 (矢代圭子)
森雅之 (銀行支店長・藤崎)
団令子 (女給・純子)
仲代達矢 (マネージャー・小松)
加東大介 (工場主・関根)
中村鴈治郎 (実業主・郷田)
小沢栄太郎 (利権屋・美濃部)
淡路恵子 (マダム・ユリ)

       *        *        *

30代の結婚したい女性、見るべからず。

予備知識無しに見てたらぐいぐい引き込まれた・・・・いやいや、すごかった。こんな演出できる人誰だ?って思ったら、成瀬巳喜男でしたか。恐れ入りました。メロドラマの王道いってます。

ほんと、30代の独身女性がみると、切実に心にしみこんできます。男が見てても、「うわ、これ・・しんどそう」って思ってしまいます。アニメ業界にも「結婚したい」と言ってる30代の未婚女性けっこういますが、この映画みせたら自殺しそうです(苦笑)。DVD買ってコピーとって、一人一人にクリスマスのプレゼントにしたいくらいですよ(笑)。

矢代圭子(高峰秀子)は、銀座のバーの雇われママ。5年前に夫に死なれ、その時に、「もう誰も好きにならない。だれもに身体をゆるさない」と手紙を書き、骨壷にいれたという。しかし、女手一つで生きていかなければならなくなった圭子。そんな圭子が喫茶店で働いているところを、今のマネジャーの小松(仲代達矢)にスカウトされてバー“ライラック”で働くようになった。彼女を夢見て通ってくる男も多い。マネージャーの小松もひそかに圭子を想っている。果たして圭子の運命は・・・・。というのが基本設定。

ただ、「バー」というのは厳密にいうと、カウンターのある洋風酒場・居酒屋で、ウェイトレスのお姉ーちゃんはいても接客サービスをする女性がいるわけではない。しかしながらこの店では、お客さんがはいってくると女性が接客するので、「バー」ではないのだろうが、「キャバレー」か「ナイトクラブ」かといわれるとそうでもない。接客する女性がいる「バー」ってことなのかな・・・。

店に出てくる娘は、もう世間ではもてることのない年齢に達したオヤジたちに、お金でモテている時間を提供してあげるている。その中には肉体関係と引き換えに、スポンサーになってもらい、銀座に店を出そうとしている女の子もいる。結局のところ店にくるお客のなかから結婚相手を見つけるか、その中の誰かの愛人になり、店をもたせてもらうかくらいの選択肢しかなくなっているわけだ。

そんな中、圭子の下で働いていたユリ(淡路恵子)は経済研究所長という肩書を持つ高級利権屋の美濃部(小沢栄太郎)のバックアップで店をもつことになる。客を何人かもっていかれた圭子は、マスターから暗に「ユリのように体を張れ」と言われる。圭子にもそのような話がないわけではない。関西実業家の郷田(中村鴈治郎)が、店を持たせるからと迫られたこともあった。しかし、コールドショルダーかましてると、圭子の下で働いている純子(団令子)が、郷田に身をゆだね、店を持たせてもらう展開になる。

数人のご贔屓の客に少し筒お金をだしてもらい、自分も店を持とうかと考える圭子だが、なかなか資金はあつまらない。そんな時、プレス工場主の関根(加東大介)の誠意だけが身にしみた。酒も飲めないのに店に顔をだしてくれる。胃潰瘍をわずらった時に見舞いにきてくれる。「店をもうとかと思う」と話した時も、「いくらかなら僕も出すけど、ママは結婚したほうがいいんじゃないかな」と言ってくれる。そして彼からのプロポーズ。圭子は関根の優しさにつつまれたくなり、関根に抱かれた。再婚の決意をしたのである。
しかし、独身だと思っていた彼には家庭があり、彼の妻から電話があり行方がわからなくなったという。行ってみるとそこはバラックの粗末な長屋で、彼女を送ってくれた車は隣人殻の借り物だった。甲斐性もないのに見栄をはり、何人もの女に言い寄り、言葉ばれそうになると姿を消すというのである。

圭子は酒におぼれた。以前からお気に入りのお客だった銀行支店長の藤崎(森雅之)と一夜を過してしまった。が、藤崎は翌日大阪の支店へ転勤になると言いながら、十万円の株券を置いて去った。
マネージャーの小松が入れちがいに入って来て、圭子の頬を打った。「圭子の亡き夫への想いを汲んで、自分は自分の想いを封印しているのに、お前はそんなにさくさく男と寝るのか!」と悔しさを爆発させる。小松も圭子の店を去っていった・・・。


切実です・・・・。

自分を求めてくれろ男はいるが、好きにはなれない。でも保健としては居て欲しい。しかし、彼らに夢を与えなければ男達は、他の女に奪われていく。不安感に負けて身体を許せばその男は裏切って行く。とりあえず一番好きな男に抱かれ、愛人でもいいかなと思い始めると、その男は転勤で居なくなる。ずっと自分だけを求めてくれた男も、自分には与えられないことに絶望し去っていく・・・。

好きな男、愛した男が去っていく寂しさではないのです。この映画のすごいところは、普段は求めないのだけど、可能性を奪われていく怖さ。自分の周りにいる保健男がどんどん居なくなっていく。自分をあたえる気もないのだけど、しかし、そんな彼らが自分の周りからなくなっていく恐怖感。どんどん増大していく人生への不安感。
そして気がつけば30歳を越えている。。。
女性の怖さのツボをついてます。

なかなか恐ろしい映画でした。。。

by ssm2438 | 2011-12-10 12:57


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