西澤 晋 の 映画日記

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2012年 12月 16日

砂漠でサーモン・フィッシング(2011) ☆☆☆

砂漠でサーモン・フィッシング(2011) ☆☆☆_f0009381_1863866.jpg原題:SALMON FISHING IN THE YEMEN

監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:サイモン・ボーフォイ
撮影:テリー・ステイシー
音楽:ダリオ・マリアネッリ

出演:
ユアン・マクレガー (アルフレッド・ジョーンズ博士)
エミリー・ブラント (ハリエット・チェトウォド=タルボット)
クリスティン・スコット・トーマス (パトリシア・マクスウェル)
アムール・ワケド (シャイフ・ムハンマド)

     ×   ×   ×

脚本がすばらしい!

『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー脚本賞とったサイモン・ボーフォイの脚本。近年まれに見る気持ちの良いシナリオで話術の巧みさには感動させられましした。
狙ってカッコイイ言葉を連打してそれで良い脚本だと勘違いしてる大ばか者がおおいなかで、サイモン・ボーフォイの言葉は自然な感じなのだけど気持ちをその気にさせていく語り口が上手い! 脚本家の真骨頂をみせていただきました。
「イエメンの川で鮭を釣りたい」という中東の富豪の戯言をきかされた主人公の水産学者が、やってるうちにそれが戯言ではなく本気の話で、そして彼自身も、それがやれるんだと信じるようになっていく。そのプレセスの言葉が素晴らしい。

監督は『マイライフ・アズ・ドッグ』ラッセ・ハルストレム。いい脚本にめぐりあって久々のヒットです。ただ、欲を言うなら、もうちょっとアピールするところは見せてくれてもよかったのに・・とは思うかな。鮭がその川を大挙して上っていく高揚感あふれるシーンはもうちょっと見せて欲しかったなあ。このシーンで感動をもってきそこねたのはやや残念。
観てる人にきちんと「放流した鮭は川上に向かっていくべきものだ」という概念をもうちょっときちんと埋め込んでほしかったかな。さらに、上流にもうすこし村とか人々の社会空間を設定して、川をのぼる鮭をみて驚く・感動するなどのリアクションをもっと積んで欲しかったかな。それをみて感動するひとがそのプロジェクトに携わった人だけだと今ひとつもりあがらない。主人公のまわりだけじゃなくって、イエメンの社会も巻き込んで感動してほしかったかな。悦びをみんなでシェアする技はハリウッドでつくったほうが上手いかもって思った。。。

もひとつ、個人的にはユアン・マクレガー側の夫婦問題は物語から省いたほうがシンプルでよかったような気がしたが、どうだろう。どうもあそこだけ物語に意味なく暗い影をおとしたような・・・。普通に独身の生物学者って設定で気持ちよく物語をまとめて上映時間をもうすこし削りつつ、鮭の描写をもうちょっと時間つかったほうがよかったと思うが・・・。

<あらすじ>
英国の水産学者ジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)のもとに、砂漠の国イエメンの富豪シェイフ(アムール・ワケド)の運営する企業の投資コンサルタント・チェトウォド=タルボット(エミリー・ブラント)から、突拍子もない仕事の以来のメールをうけとる。イエメンで鮭釣りができるようにしてほしいというのだ。あまりに荒唐無稽な話に、鮭の産卵・生息環境としては温度が低く、酸素をふんだんに含んだ川が必要であることをあげ、イエメンにはそんな川はありえないと突っぱねる。
一方、英国政府は中東との関係が怪しくなっており、なにか友好的なイベントはないかと探していると、この話にでくわしこのプロジェクトを強行に推し進めていくことになる。クビかこのプロジェクトを引き受けるか迫られたジョーンズはしぶしぶこの仕事を了承、シェイフにたいして法外な予算と鮭の輸送手段、そして巨大なダムをつくった中国の技師たちとの謁見を要求する。しかしいとも簡単にそれを実行してしまうシェイフ。どんなやつだとあってみれば、これが人徳豊かな誠実な人。最初はナンセンスだとおもっていたこのプロジェクトも、彼の言葉を聴いていると「もしかしたら出来るかもしれない」と思えるようになってくるジョーンズ。
シャイフは鮭を放流する川の上流に巨大なダムを建設、雨季に蓄えられた水で川にはつねに綺麗な水を供給できるようにしていた。
しかし、総ての環境はととのえられたとして、イエメンに空輸する鮭1万匹はどうする? 英国の環境団体は、そんな途方もない話に英国の鮭1万匹など提供できないという。あえなく、養殖の鮭でそれをまかなうことにする。しかし、養殖の鮭がを放流しててもその鮭が川の流れに逆らって川を上り、ほんとに産卵するのだろうか? そして1年後にまたもその川にもどってくるのだろうか? 一抹の不安を抱えながらもジョーンズは養殖の鮭をイエメンの川に放流する・・・。

最後はもうちょっと上手くまとめられたのでは?とも思うが、でも気持ちよく、爽やかに泣かせていただきました。

by ssm2438 | 2012-12-16 18:06 | ラッセ・ハルストレム(1946)


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